The Private Papers of Henry Ryecroft

The Private Papers of Henry Ryecroft The Private Papers of Henry Ryecroft (English Edition)
The Private Papers of Henry Ryecroft
著者:George Gissing
発表年:1903
オススメ度:★★★★
英語難易度:★★★★
読了日:2015.04.05

あらすじ

売れない作家だった、Henry Ryecroftは、晩年、ひょんなことから、少しばかりのお金に恵まれて、青年時代を過ごしたロンドンを離れ、イングランドの片田舎に移住する。
そこでの、静かな日々、読書と散歩にふける毎日、回想、思想、そして、自然の美しさが描かれる。

私の感想、レビュー

一応、フィクションという形をとっていますが、明らかに、ギッシングの自伝的作品で、最初から最後まで、ストーリーらしいストーリーは無く、エッセイのような小説に仕上がっています。

読んでみての感想は、素晴らしい!の一言です。
章が、春夏秋冬の4つに分かれ、花や鳥たち、田園の様子といった、風景描写の美しさが秀逸です。
「散歩のときに見かけた植物の名前を全て知りたい」という主人公から、自然への愛が感じられ、読んでいると、本当に穏やかな気分になります。

孤独の素晴らしさや、戦争に関して、科学が古き良きものを壊してしまい、何でもかんでも資本主義化されて行く世界を憂いた所は、かなり共感できました。

Every day the world grows noisier; I, for one, will have no part in that increasing clamour, and, were it only by my silence, I confer a boon on all.

For me, it is a virtue to be self-centred; I am much better employed, from every point of view, when I live solely for my own satisfaction, than when I begin to worry about the world.

Living as I do now, I deserve better of my country than at any time in my working life; better, I suspect, than most of those who are praised for busy patriotism.

To live in quiet content is surely a piece of good citizenship.

平和で、自然と同調した、静かな暮らしをする主人公をみていると、私の大好きな作品である、Henry David ThoreauのWalden and Civil Disobedienceを思い出し、暴力的資本主義や文明の暴走に加担しない、こういったシンプルな暮らしこそ、人間本来のあるべき姿なのかもしれないと、思いました。

英語についてですが、難易度はかなり高いと思います。
1903年発表で、100年以上前の作品になるからか、古風な単語が多く使われ、文の構造も、現代のものとは少し違った印象を受けました。
また、所々、ほんのちょっとですが、ラテン語、ギリシャ語、ドイツ語なども出てきます。

さらに、背景知識がないと理解できないような内容が多く出てきます。
ホメーロス、シェイクスピア、ゲーテの作品の話や、ユダヤ教ファリサイ派やキリスト教清教徒の、イングランドの宗教事情、などなど、知らないと、100パーセントの理解は難しいです。
また、地名もたくさん出てきますので、イングランドの地理に詳しくない私には、どこがどこなのか、良く分かりませんでした笑。
翻訳版も、「ヘンリ・ライクロフトの私記」として出ているので、日本語版は私は読んでいませんが、興味のある方は、両方読んでみるのも面白いかもしれません。

前述のとおり、英語が難しく、多くの背景知識を要求する、かなり難易度の高い作品で、これを辞書や参考文献なしに完璧に理解できる人は、相当、教養のある、英語力の高い人だと思いますので(ラテン語、ギリシャ語、ドイツ語も理解できる必要あり)、「俺は、私は、自分の知識に、自分の英語に、自信がある!」という、上級者にオススメの、思想書としても素晴らしい、自然や心象の描写がとにかく美しい作品です。